第10話 こいゆび、ひみつ 「計画」

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第10話 こいゆび、ひみつ 「計画」

翌日の夕方。月村家の陽太の部屋では、陽太と琴音が向かい合って座っていた。陽太はベッドの端に腰掛け、琴音は彼の勉強机の椅子に座っている。

窓から差し込む夕陽が二人の顔を赤く染め、その光が緊張感をさらに際立たせていた。胸の奥でざわつきが広がり、この静けさが二人をさらに意識させているようだった。

月村家は築20年ほどになる木造二階建てだ。外観には風雨による色あせが見られるものの、内装は温かみのある木目調で包まれている。

柱には小さな傷や色あせが目立ち、壁紙もところどころ剥がれかけていて年月の重みを感じさせる。リビングには家族で使う大きなダイニングテーブルが置かれ、その隅には葵が最近置いた観葉植物が小さく揺れていた。

この時間帯、陽太の父親は地元で経営している定食屋で働いているため家にはいない。母親を幼い頃に亡くした月村家では、父親が昼夜問わず働きながら子供たちを育ててきた。

その影響で陽太はどこか不器用な部分を持ちながらも、自分なりに家庭を支えようとしていた。そして今、この時間帯には陽太と琴音だけが残されていた。

陽太の部屋は、琴音にとってすでに見慣れた空間だった。一度訪れた時と変わらず、壁には地元サッカーチーム「湯乃花ブレイズ」のポスターが貼られ、棚にはチームグッズやトロフィーが並んでいる。

琴音は以前、この部屋を見たときに陽太がサッカー好きだということを知り、その情熱に少し感心したことを思い出していた。机の上には教科書やノートが雑然と積まれ、床にはゲーム機やコントローラーが無造作に転がっている。その隣には読みかけのマンガ本も数冊積まれていて、生活感あふれる様子も前回と変わらない。

しかし――今日は琴音自身、この部屋への感じ方が以前とはまるで違っていた。胸の奥でざわつくような緊張感が広がり、この空間全体が妙に近く、そして特別なものに感じられる。

琴音は勉強机の椅子に座りながら、視線を棚やポスターへ向けているふりをしていた。しかし、その意識は自然と陽太へ向かっていた。彼の些細な動き一つ一つに、自分でも驚くほど敏感になっている自分を感じ取っていた。

一方で陽太はベッドの端に腰掛け、膝の上で手を組んでは解き、指先を何か探るように動かしていた。その仕草には落ち着きがなく、視線も床や壁へ逃げるように動いていて、琴音の顔だけは見ないようにしているようだった。

窓から差し込む夕陽が二人を赤く染め、その光は二人だけの静かな時間と空間をさらに際立たせていた。

***

二人の間には微妙な空気が流れ、時計の針が刻む音だけが部屋に響いていた。その単調なリズムは二人だけの静寂を際立たせるようで、胸の奥でざわつく感覚をさらに強くしていた。

琴音はスカートの裾をぎゅっと握りしめた。その手は微かに震え、胸元では鼓動が速くなる。どう言葉を切り出せばいいかわからないまま、小さく息を吸い込んで口を開いた。

「場所って…どうすればいいかな?」

陽太はベッドに腰掛けたまま視線を床へ落とし、不規則に動く指先で膝上を弄っていた。その仕草には隠しきれない戸惑いが浮かび上がっている。

「…わかんねぇよ。」

その声は小さく、どこか投げやりだった。琴音は深呼吸してから言葉を続けた。

「私の家とか…」

その瞬間、陽太は顔を上げた。しかし琴音と目が合う前に視線を肩あたりへ逸らし、「そんなの無理に決まってんだろ」と呆れたように言った。その曖昧な視線から、不器用ながらも彼なりの気まずさが滲み出ているようだった。

「じゃあ、カラオケボックスとか…」

琴音が提案すると、陽太は目を丸くして声を荒げた。

「バカじゃねえの?」

その言葉とは裏腹に、顔から耳まで赤く染まっている。

「学校とか…」

琴音が続けると、陽太は額に手を当てながら視線を床へ落とした。

「どこの学校だよ」

その仕草には隠しきれない照れくささが滲んでいた。琴音は唇を軽く噛みながら視線を床に落とし、どうすればいいか必死に考えた。

「公園のトイレとか…」

「おい!」

陽太の声が少し高くなる。

「ダメに決まってるだろ、そんな場所!」

彼は思わず膝上で握ったぬいぐるみを強く握り直した。その動作には、自分でもどうしていいかわからない戸惑いが表れていた。琴音はため息をつきながら呟いた。

「じゃあ、どこならいいんだろう…?」

二人は沈黙に包まれた。部屋には時計の針がカチカチと動く音だけが響き、その単調なリズムが二人の緊張感を際立たせているようだった。

「もしかして、無理なのかな…」

琴音が小さな声で呟いた。その言葉には諦めとも取れる弱々しさが滲んでいた。陽太も同意するように頷きながら、「やっぱり変だよな、こんなこと…」と漏らした。その声にはどこか迷いも含まれていた。

その時、琴音の目が突然輝いた。「あ!」

「な、何だよ。」

陽太は目を丸くしながら椅子から少し身を引き、その仕草には明らかな戸惑いが垣間見えていた。

「温泉!」

琴音は勢いよく声を上げた。

「ねえ、一緒に温泉に入るってどうかな?」

陽太は目を見開き、胸の奥で何かが跳ねるような感覚に襲われた。言葉を探そうとするものの頭が真っ白になり、「は?」とだけ返した。琴音は目を輝かせながら勢いよく言葉を紡ぎ始めた。

「私ね、ここに引っ越してきて…その…公衆浴場で男の子の…見て、それでこういうことが気になっちゃうようになったんだ…。だから温泉なら…」

「おい、おい!」

陽太は慌てて手を振りながら制した。

「公衆浴場なんてダメだろ。他にも人いるんだからさ。」

「あ…」

琴音は急に冷静になり、顔から熱が引いていく。

「そっか、そうだよね。ごめん、変なこと言っちゃって…」

陽太はしばらく黙っていた。しかしその沈黙を破るように、小さな声で呟いた。


「…家族風呂。」

「え?」

琴音は驚いて聞き返した。その声には期待とも戸惑いとも取れる微妙な響きが混ざっていた。陽太は顔を真っ赤に染めながら、胸の奥で鼓動が速くなるのを感じつつ、少し大きな声で繰り返した。

「家族風呂なら…二人だけになれるだろ。」

琴音は目を大きく見開いた。その言葉に驚きながらも、どこか期待に胸が高鳴る。

「そっか!家族風呂!」

二人は顔を見合わせ、一瞬だけ視線が絡む。その瞬間、胸の奥で何かが跳ねるような感覚に襲われた。しかしすぐにお互い目を逸らし、それぞれ違う方向へ視線を向けた。その仕草には隠しきれない照れくささが滲んでいた。

「じゃあ…本当に行く?」

琴音は恥ずかしそうに尋ねた。その声には不安と期待が入り混じっている。陽太はゆっくりと頷いた。

「ああ…」

こうして二人は家族風呂で「見せ合い」を実行する計画を立てた。しかし、その決定に至るまでの会話ではお互い顔が真っ赤になり、胸の奥で鼓動が激しく響いていた。高揚と戸惑い。

それぞれの心中で渦巻くその感情だけが、部屋中に漂っていた。

第11話に続く

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