
「パブリック・ドメインの作品って自由に使ってもいいの?」
「商用利用としても使えるの?」
2022年1月、アメリカで1926年に出版された児童小説「くまのプーさん」などの著作権が消失したことで「パブリック・ドメイン」というワードが日本でも広く知られました。
この記事では、そのパブリック・ドメインの概要から商用利用する際の注意点、著作権フリーとの違いについて解説していきます。
記事後半には、パブリック・ドメインを実際に見ることができるお勧めのサイトもいくつか掲載しています。是非最後までご覧ください。
パブリック・ドメインとは

パブリック・ドメインとは、著作権などの知的財産権の保護が発生していない作品、消失している作品のことを指します。
通常ですと、小説や音楽、画像、イラストなど、思想又は感情を創作的に表現したものには、著作者が著作物を創作した時点で「著作権」という権利が発生します。
そのため、著作者の許可を得ることなく、他人が著作物を無断使用した場合には「著作権侵害」に当たる可能性があり、著作者が告訴することにより、懲役又は罰金が課せられる可能性があります。
パブリック・ドメインとは、このような著作権などの知的財産権が一切ない状態のことを言い、一言でいうならば「誰でも自由に使用、公開、複製することができる作品」のことを 指します。
パブリック・ドメインにあたる要素として以下の3つのいずれかに当てはまるものをいいます。
- 著作者が著作権を放棄した作品
- 著作者が亡くなり、70年経過した作品
- 著作者に相続人がいない作品
著作者は著作権を放棄することができる
著作者は、著作権を自分の意思で「放棄」することが可能です。著作者が著作権を放棄すれば、その作品はパブリックドメインとなり誰でも自由に利用することが可能になります。
これは、著作権法に認められる保護期間中であっても同様で、著作者の自由意志により、著作権を放棄した以上、作品を法律上保護される事はありません。
日本では没後70年で著作権が消失する
では、著作者が著作権を放棄しない作品は永年、著作権で保護されるのでしょうか?
実はそれには期限があり、日本では著作者の没後70年は著作権法によって保護されると定められています。(国によって年数は異なる)
つまり、没後70年以降からは自動的に著作権が消失してパブリックドメインという扱いになるのです。
著作者に相続人がいない場合
著作者がなくなった場合、著作物の著作権は「著作財産権として相続」することが可能ですが、相続人がいない場合についての見解は次のとおりになっています。
著作権者が死亡した場合に、その著作権(著作財産権)が国庫に帰属すべきこととなる場合には、著作権は消滅するとされています。
著作権が国庫に帰属すべきこととなる場合とは、相続人が不存在という場合です。
著作権は消滅するというのは、いわゆるパブリック・ドメインになり、誰でも許諾を得ることなく(許諾を得る方もいませんし...)利用することができます。
引用元:高木泰三行政書士事務所 著作権Q&A こんなときの著作権
http://www.takagi-office.biz/contentbusiness-faq36.html
つまり、相続人がいない場合は著作権が消失して、いわゆるパブリック・ドメインになるのです。
パブリック・ドメインの作品を商用利用することは可能?その注意点とは

パブリック・ドメインとはなにか?ということについてご理解をいただけたかと思います。
それでは、この記事の本題である「パブリック・ドメインは商用利用することが可能か」という点に触れていきます。
結論から言うと「パブリック・ドメインは商用利用することが可能」です。
しかし、利用する際の注意点もあるのでしっかりと確認しておきましょう。
パブリック・ドメインは商用利用することができる!
パブリック・ドメインは原則として「商用利用することが可能」です。
前述にも触れましたが、パブリック・ドメインには著作権が存在しないため、誰に許可を得ることなく無断で自由に使用、公開、複製することができます。
例えばですが、かの有名なレオナルドダヴィンチは数多くの有名作品を残していますが、1519年に亡くなっています。
そのため、現在では「最後の晩餐」や「モナリザ」などの著作権は消失しており、レオナルドダヴィンチの作品を使用したグッズを営利目的で作成・販売しても、誰かにロイヤリティーを払う必要はありませんし、訴えられる心配もないのです。
絵画の著作権の保護期間は、原則として著作者の死後50年です。
しかし、モナリザ(絵画「モナリザの微笑」)の作者ダビィンチは1519年に死亡しており、死後500年近く経過しており、もやは著作権は切れています。したがって、誰でも自由にモナリザを利用することが可能です。
出典 : モナリザの著作権はどうなっているのか|ブランシェ国際知的財産事務所
https://www.branche-ip.jp/2013/11/01/%E3%83%A2%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%B6%E3%81%AE%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B/
しかし、パブリック・ドメインとはいっても自由に何をしてもいいわけではありません。利用する際の注意点を見ていきましょう。
二次的著作物や著作隣接権に注意
著作権がないパブリック・ドメインの作品を利用して作られた著作物には、新たに著作権が発生します。これを「二次的著作物」といいます。
また、パブリックドメインの作品を演奏や録音した作品には「著作隣接権」が発生します。
ポイント
二次的著作物は作者の死後70年、著作隣接権は公表後70年の保護期間が定められています。
利用する際には、パブリック・ドメインそのものなのか、パブリック・ドメインを利用した新たな著作物なのかを見極めることが必要です。
著作者人格権までは消失しない
パブリック・ドメインとなった作品は、著作権は消失しますが、著作者人格権は消失しません。
著作者人格権とは、著作者の人格や名誉を保護するもので、悪意のある改変や人格を侵害する行為から守るものです。
ポイント
著作権法では、作者の死後も著作者人格権を侵害するような行為は禁止されており、過去には遺族から訴えられるケースもあるので注意が必要です。
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【要注意】パブリック・ドメインと著作権フリーは全く異なる

ここまでパブリック・ドメインについて解説してきました。
著作権の放棄や著作者の死去・相続人の不在等により著作権がなくなった作品のことを指し、そして商用利用することが可能とご理解いただけたかと思います。
「じゃあ”著作権フリー”とホームページに記載があれば商用利用してもOKってことか!」
と思った方は、要注意です!!
「パブリック・ドメイン」と「著作権フリー」は似て非なるものなので、違いを明確にしておきましょう
著作権フリーは、著作権放棄しているとは限らない
ネット上には「フリー素材」と謳っているサイトが数多く存在します。
フリー画像、フリーイラスト、フリー音源(BGM)などのサイトが広く知られています。皆さんも一度は利用したことがあるのではないでしょうか。
実はこの「フリー素材」は「自由に使っていいものではない」のです。
その違いについて以下の表をご覧ください
著作権 | 商用利用 | |
パブリック・ドメイン | 放棄・消失 | 可能 |
著作権フリー | 著作権は存在(放棄している場合は別) | 著作権者が許可した範囲 |
(著作権フリーと謳っているサイトの中には、著作権を放棄している作品も含まれることがあるので一概には言えませんが…)
一般的にフリーサイトは「著作権を放棄していない作品」がほとんどという認識でいたほうが無難です。
ポイント
パブリック・ドメインは著作権が発生しないため、商用利用をすることが可能ですが、著作権フリーと謳っているものの作品の中には、著作権放棄していない作品も多くあり、その場合は著作権者が定めた利用範囲しか使用することができません。
商用利用することができるかどうかは、そのサイトの利用規約等をよく読んで使用することが必要なのです。
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パブリック・ドメインの作品が見れるお勧めのサイト

実際にパブリック・ドメインの作品が見れるお勧めサイトをいくつか掲載します。
パブリックドメインR|画像サイト
白黒写真を中心に取り扱うパブリック・ドメインの画像まとめサイトです。
2000年代以前のモノクロフィルムで撮影された写真が多く、古風な作品を見ることができます。
パブリックドメインQ|画像サイト
パブリックドメインRとは反対に、カラフルな写真や絵画を中心に取り扱うパブリック・ドメインのまとめ画像サイトです。現代の写真も多く掲載されています。
青空文庫|小説サイト
青空文庫は、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、図書館のようにインターネット上に集めているサイトです。著作権の消滅した作品と「自由に読んでもらってかまわない」とされたものを、テキストなどの形式に電子化した上で読むことができます。
musopen|音楽サイト
https://musopen.org/
musopenは、 パブリックドメインとなった楽曲の音声ファイルをダウンロードすることができるサイトです。ダウンロードだけではなく、視聴をすることも可能です。
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まとめ

本記事では、パブリック・ドメインの概要から商用利用、著作権フリーとの違いについて解説してきました。
パブリックドメインとは、著作権などの知的財産権が発生していない状態のことをいい、自由に使用・複製、商用利用できる作品のことを指します。
しかし、その作品に著作権がなくても、著作者人格権は消失していない。そして、二次的著作物で著作権が別に発生している場合があるので注意が必要です。
併せて、著作権フリー=パブリック・ドメインではないということを理解しておくことも必要です。
ここからは個人的な意見になりますが、すべての作品には「著作者の人生と技術、強い思い」がつまっています。
「パブリック・ドメインだから好き勝手にしていい」という考えではなく、著作者の意向や思いを尊重した上で「作品を使用させていただく」という気持ちが大切なのだと思います。
特に、著作者が亡くなった為、著作権が消失したパブリックドメインの作品からは、その時代の文化や思想が読み取れるものが多いです。この機会に是非パブリック・ドメインの作品に触れて、その時代に生きた人々の人生観を感じてみてください。
参考文献
http://www.takagi-office.biz/contentbusiness-faq36.html
https://www.branche-ip.jp/2013/11/01/%E3%83%A2%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%B6%E3%81%AE%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B/
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